Vol.327 2021.5.11

音楽・美術の旅 メールニュース
 
Column

ドライビング イン イタリー その1

運転は嫌いではない。どちらかといえば好きな部類に入るのだろう。かといって高校卒業前に我こそはと教習所の門を叩くほどのせっかちだったわけでもなく、合宿に参加してまで早々に免許取得しようと意気込むほど車へ向かう情熱があったわけでもない。

大学を出てから就職する前に必要枠として取得したに過ぎないのである。だからというわけでもないが、車のメカニズムに関してどちらかといえば疎い方かもしれない。きっとそうである。

運転歴としては初動がよかった。若い時分、郷里の鹿児島で教職に就くことが決まり、実家から勤め先の高校まで通う必要があったのである。なんと片道一時間ほどの道のり。実家のある鹿児島市から地区区画整理によって、今は名称の変わった串木野市(現在のいちき串木野市)まで国道を北上、南下するだけのことであるが、初心者運転で連日一時間を往復すればそれはかなりの経験である。

おっかなびっくりでアクセルとブレーキを、何より当時はマニュアル車主流だったこともあり、マイカーもクラッチ、ギアチェンジを当たり前のように繰り返すことによって瞬く間に操作することには慣れていった。違反はあったが事故はなし。しかし、いま考えてみればその頃、運転することの面白さを、醍醐味を味わいながら生活していた記憶はない。

イタリアに渡ったのはその数年後、安定した生活を手放した。単純に学ぶための渡航だったので貧乏生活覚悟、外国で運転することなど当初考えてもいなかった。

限られた資金を無駄なく使わなければならない。稼ぐ手段があるなんて思いもしなかったから、当然のことであろう。

ミラノに落ち着いて半年経ったあたり、言葉にもやや慣れてきたこともあり、簡単なアルバイトをはじめる。もちろん食べていくために十分の稼ぎがあったわけではないが、僅かなり懐に入ってくるものがあればそれはそれで心中いくらか穏やかになる。

幾年後かそのうち伴侶となるであろう女性と知り合ったこと、日常をバス、トラム、メトロを使い、時に遠出するための電車を乗り継ぎながら、せっかくイタリアにいるのであれば、限りある滞在期間(その頃は真剣にそう考えていた)を有意義に過ごせたら、もう少し自分たちの足で自由に遠くまで行けたらと考えるようになる。

ミラノの友人より、車を買い替えるのでいままで乗ってきた小型車を手放したく、安価でも構わないので誰か引き取ってくれないかと買い手を探している知り合いがいる、ということを聞く。見境なく、餌もついていない釣り針にパクっと食いついたことを思い出している。

堂満尚樹(音楽ライター)
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